第一夜…『真夜中の徘徊者』


あれは…確か…小学3年の頃の夏休みのコトである。
地区の子供会の行事で町内のお寺に隣接した幼稚園の教室に合宿し…
夜中には墓地で肝試しなどをするという行事が毎年あった。
小学5年生と6年生に関しては、幼稚園の敷地にテントを設営して
そこに寝泊まりするのだ。
毎年、 なんだかんだと偶然におとんの実家の福島へ行くなどで
それまでは出席したコトのなかった行事だったのだが、その年は何もなく
普通に合宿に参加するコトとなった。

お寺の中にある幼稚園なので…朝はお寺の中で正座をして精神を鍛える如く
座らされたり…ラジオ体操をして、夏休み帳を決まった時間に書いたり…
ちょっとしたゲームをしたりなどで過ごした。

夜はカレーを作って食べて…簡単な肝試しをして、幼稚園の教室に簡素な布団を敷いて
みんなただ…雑魚寝という微妙な内容の行事ではあるものの…特に思うコトもなく、
それなりに楽しんでたと思う。

そうして…8時か9時頃には消灯時間で眠りについてた。
当時のボクは、いつも早く寝て…朝、早く起きるのが当たり前だったので…
布団に入るとわりとすぐに眠りについてしまった。



真夜中に…ふと目が覚めた。


辺りは電気が消えてて暗かったのだけど、廊下には電気がついててそういう意味ではトイレへ行くのも
怖くは感じずにすんだ。布団からそぉ〜っと抜け出すと…トイレへ向かった。
周りのコは、みんなすっかり眠りについていた。
廊下へ出ると…明るくて…何処からともなく大人たちの話声が聞こえてきて、マダ誰か起きているようだった。
ボクは、眠さもあったのだけど、とにかくトイレを済ませようとパタパタと廊下を駆けてトイレへ行くと…
やはり、電気のついてたトイレへ入り…用を済ませると…スッキリして…手を洗っていた。

ふと、顔をあげると…トイレの窓が全開に開いてて、その位置からは…ちょうど、墓地が見えた。
なんとなくの薄気味の悪さに怖くなったのだけど、電気がついてるので、大丈夫だと自分自身に言い聞かせた。
見たくないのに気になるもので…チラチラと見てると…青い火の玉のようなのが数個…フワフワと墓地の中を舞っていた。
見てはいけないものを見た気になり…慌てて…見ていないといい聞かせ…大急ぎで自分の布団のトコまで戻ると、
タオルケットを頭からかぶって…早く寝ようと集中した。

ところが、気になって仕方なくて眠気なんかちっともおそって来ないのだ。
それどころか…何やら空気がザワザワしてる気がして仕方なく…コワイと思いつつも…そぉ〜っと
タオルケットから辺りを見回した…辺りはシンと静まり返っていた。
そんな中…廊下側に限りなく近い場所に横になってたボクだったが…窓際の方に
数人の人影が見えた。

一人は、白い服を着た女の人で…あとの3人くらいは…黒い影…男の人のように見えた。
きっと…大人の人の見回りに違いない…と、ボクは、そう思ったのだが…様子がとてもおかしい。
寝てる子等の顔を手に持った灯りで照らしながら覗き込んでいるようだったのだが…
その動きがとてつもなく不自然で…スゥ〜っと滑るように移動をしてる。
そして…おかしいのは…女の人は白いワンピースみたいなのを着てるのがハッキリしてるのだけど
周りの男の人は、あまりにも真っ黒な影なのだ。スゥ〜ッと変な動き…

妙に心臓の鼓動が高鳴って…ドキドキしながら…再びタオルケットを頭からかぶった。
もはや、火の玉の恐怖なぞは、たいした恐怖ではない。

あの白い女の人がこちらへ来る…そんな感覚があった。
そのコトだけでいっぱいいっぱいなのである…あぁ…どうしよう;;;見つかってしまう;;;
起きているコトが判られてはいけないような気がしてならなかった。
その心臓の高鳴りが、最高潮に達した時…
コワイもの見たさで…どうなったかなぁ…という、好奇心の方が勝ってしまった。

そうして、恐る恐る…タオルケットから顔を出し…そぉ〜っと目を開けてみた。








ボクの視界には、幼稚園の教室の天井が広がったのだけど…

さっきまで、何もなかったはずの天井、壁…至る処に子供が張り付き壁に天井にしがみつき
いっせいにこちらを凝視してきた。これだけでもかなりの卒倒ものだったのだが、
追い打ちをかけるように…あの白いのと黒いのもすぐそばにいて
ボクは、そのまま…気を失った。





気づくと…朝になっていた。




その夜のコトは、何だったのかよくわからないが…

ボクは、この日から…あらゆる不思議な体験をするコトとなった。

今となっては夢かどうかもわからないが…
翌年もさらに翌々年も…
この合宿というと、突然熱が出て…不参加となったので
ボクの子供会のお寺合宿は、この1回だけとなった。


強烈に記憶に刻み込まれる序章となって…
ボクの記憶に深く深く残ったのだった。


ボクのちょっぴり不思議な体験記…

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