第二夜…『…落ちろ…』
昔…ボクは、幽霊といえば夜出るものだと思っていた。
あのお寺の幼稚園に合宿してからというもの…ボクの周りでは
ちょっとばかりおかしなコトが起こるようになっていた。
思えば…ボクは、4歳の頃に兄を交通事故で亡くしてから…
よく兄と遊ぶコトが多く…見えるのは自分だけだと気付いたのはそれからしばらくしてからだった。
それでも兄は、死んでも尚、変わらず兄だったので、
ちっとも怖いとは思わなかったし…むしろ、寂しい時に遊んでくれたので
ボクにとっては必要な存在だったのかもしれない。
いつの頃からか…存在は感じるのだけど…兄を見るコトはすっかりなくなっていた。
あの合宿で体験したコトは、ボクにとってははじめてのコワイ霊体験となったのだが
それ以降…ボクは、よく金縛りにあうコトが多くなった。
夜中に動けなくて…声も出なくて苦しい思いを何度もしたのだが…
その金縛りが、霊的なものだったのかどうかは、今となってはよくわからないが
当時は、怖くて仕方なかったのを覚えてる。
そんなある日のコト…
2階の部屋がボクの部屋だったのだが…
部屋から出て…階段を降りようと、足を前に出した時である…
マダ明るい真昼間だというのに…ボクの背後で変な気配がしたかと思うと…
「…落ちろ…」
と、男の人の声が背後から聞こえ…次の瞬間…、
体が金縛りにあったように硬直して…ドンっと背中を押されたような感覚があり
ボクは、2階から一気に十数段も下へと落ちたのだった。
幸い…怪我もなく…ちょっとおしりを打った程度で済んだのだけど
何が起きたのか、なかなか理解できなかったが…
考えれば考える程に…怖さが増していったし…
なぜ真昼間に霊が出るのかそして…落とされたのか…
まったく理解できないままだった。
落とされた直後に…当然…2階を見上げたが…
何もいなかった。
それから、しばらくは…階段を降りるのも緊張してばかりになった;;;